丸山 理留敬(出雲徳洲会病院病理診断科部長/山陰病理診断研究センター・センター長)
山陰病理診断研究センター(T-SAP)は2021年6月に新設されました。現在は院内にある内視鏡センターからの生検や内視鏡切除検体が主体で、2021年12月からは宇和島徳洲会病院の病理診断を担当する予定です。しかし、当センターが開設されたもう一つの目的は、徳洲会グループ内だけでなく、グループ外の病理医のいない施設との病病連携による病理診断を推進することです。島根県の病理専門医数はわずか12人で、病理医が常勤する病院は本院以外では島根大学病院など大規模病院に限られています。人口10万人あたりの病理医数は1.7であり、東京都の3.0に比して格差があります。鳥取県もほぼ同様であり、山陰地区において病理診断業務を遂行する体制は十分であるとは言えません。そのような状況で、今までは多くの医療施設からの病理検体が民間の検査会社に提出されてきました。しかし2020年3月に厚生労働省医政局から、病理診断は医療法に基づき保険医療機関でなされるべき、という正式見解が出されました。病病連携を行えば、迅速で正確な病理診断を病理医不在の病院に提供することができます。当センターでは厚労省の見解に沿って山陰地区での病理診断の現状を改善し、それにより地域医療に貢献していく所存です。