保険医療機関間の連携による病理診断
従来より我が国は病理専門医の数が少なく、がん医療を推進する上でも大きな問題となっていました。このような状況をうけて、平成17年3月15日に厚生労働省医政局総務課長名の通知(医政総発第0315001号)〝病院における検体検査業務の受託について〟が出され、保険医療機関の連携による病理診断が促されました。表1は平成28年に厚生労働省保険局医療課 疑義解釈資料の送付について(その8)より示された保険医療機関間の連携による病理診断業務の流れです。
民間検査会社は病理標本の作製を行いますが、〝病理診断書〟の発行はできません。このため病理医のいない施設は検査会社で作製された標本を受け取り、病理医のいる病院へ診断を委託することにより〝病理診断書〟を受け取ることができます。
病理医がいない病院がホルマリンに入った病理検体を直接委託先に送り、病理診断を求めても、診療報酬上は診断料、管理加算料ともに徴収できませんでした。
病理専門医のいない施設(A病院)は民間検査会社にホルマリン固定病理検体を提出し、作製された標本を病理専門医のいる施設(B病院)に送付し、病理診断を得ることが出来る。保険医療機関でない民間検査会社は病理報告(判断)書を発行するが、病理診断書は発行出来ない。診療報酬は8600円(標本作製料)+1300円(判断料)。
平成30年(2018年)4月1日より依頼施設(A病院)は、ホルマリン固定病理検体を直接、委託施設(B病院)へ送付し、標本作製と病理診断の依頼ができる(図中緑の太い矢印)。
2018年春に至ってプレパラートのみでなく病理検体そのものを委託して、病理専門医によって病理診断が行われることに対しても診断料と管理加算料が算定されるという改訂がなされました。
これは、病病連携を推進する上で、重要な布石となるものです。
2012年当時、徳洲会施設の病理診断の約40%が外注されていたが、2022年3月現在では外注比率は10%以下と大幅に減少している。これは徳洲会が全国に病理センターを開設し病病連携による病理診断体制を整備してきた成果である。
従来の民間検査センターへの外注では病理判断書しか発行されないが、病病連携により病理診断書が交付できるようになり、病理診断業務の質の改善をもたらしている。
徳洲会九州・沖縄病理診断研究センター(T-KOP)は福岡、長崎北、山川、屋久島、名瀬、笠利、徳之島、喜界、沖永良部、与論、宮古島、石垣島、中部、南部の14施設の病理診断業務を行っている。大阪病理診断研究センター(TOP)は八尾、生駒市立、松原、神戸、近江草津、六地蔵、他9施設の15施設、辻堂病理診断センター(T-TP)は湘南藤沢、茅ヶ崎、白根、館山、湘南大磯、湘南厚木、新家クリニックの7施設、山陰病理診断研究センター(T-SAP)は出雲、宇和島、高砂西部、松江生協、他5施設の9施設、東日本病理診断研究センター(TEP)は成田富里、四街道、古河の3施設の病理診断業務を担当している。
徳洲会病理部会は現在常勤病理医42名、非常勤病理医50名、病理技師117名により業務を行っており、業務の質、量の一層の充実を計っている。徳洲会病理センターはこれまで徳洲会系施設の病理診断業務を担当してきたが機能の質的、量的拡大に伴い一層の社会貢献を行うべく病病連携に基づいて病理センター周辺の徳洲会に属さない医療施設への病理診断の提供も検討中である。(図参照)