第8回徳洲会病理部会学術集会

第8回徳洲会病理部会学術集会

日時 2021年11月21日(日)午後2時00分~午後5時10分
2021年11月22日(月)午前9時00分~午前11時50分
場所 米子ワシントンホテルプラザ米子駅前
内容 特別講演 鍋島 一樹(福岡大学医学部病理学講座教授)
「悪性胸膜中皮腫の診断における免疫染色とFISHの有用性」
教育講演 中塚 伸一(八尾徳洲会総合病院病理診断科部長)
「免疫不全、免疫異常に関連したリンパ腫」
シンポジウム 【膵腫瘍の細胞診】 樋口 佳代子(沖縄協同病院病理診断科長)
加藤 拓(成田富里徳洲会病院)
「膵臓の細胞診ガイドラインより」
古川 朋美(福岡徳洲会病院)
「当院における膵胆道系細胞診の現状」
江口 光徳(宇治徳洲会病院)
「当院における膵臓の細胞診」
一般演題 募集は締め切らせて頂きました
対象:徳洲会グループ施設所属職員
資料 第8回徳洲会病理部会学術集会抄録 ダウンロードはこちらから

第8回徳洲会病理部会学術集会報告書

2021年11月21日、22日 会場:米子ワシントンホテルプラザ米子駅前

徳洲会病理部会は11月21日から2日間、鳥取県で開かれた第60回日本臨床細胞学会秋期大会の会期に合わせ第8回学術集会を開催した。

学術集会の様子

学術集会の様子

  1. 学術集会の企画、運営

    学術委員長の丸山理留敬先生(出雲徳洲会病院)の企画によりプログラムとして特別講演1題、教育講演1題、シンポジウム1題、一般演題6題を設定した。参加人数を抑え、感染対策を徹底したうえで実施。来年度、福岡徳洲会病院に入職予定の鍋島一樹・福岡大学医学部病理学講座教授の特別講演をはじめ、様々なテーマの講演・発表があり、全国のグループ病院から参加した医師や臨床検査技師らは知識を共有し研鑽した。
    冒頭、青笹克之・徳洲会病理部門最高顧問は「徳洲会グループから病理部会の活動に対し高い評価を得ました。本日は充実したディスカッションができることを期待しています」と挨拶。さらに、青笹・最高顧問が監修を務め、成田富里徳洲会病院(千葉県)の加藤拓・臨床検査技師と八尾徳洲会総合病院(大阪府)の岩﨑由恵・臨床検査技師が編集補助として参加した『細胞診鑑別アトラス』(医歯薬出版刊)の発刊を報告した。

    青笹 克之先生(徳洲会病理部門最高顧問)

    青笹 克之先生
    (徳洲会病理部門最高顧問)

    1日目の最後には総会を開催。青笹・最高顧問が同部会の管理体制や運営について説明、また現在、常勤医が34人、病理を専門とする臨床検査技師が111人まで増え、体制が充実してきたことを報告した。さらに、地域のグループ病院の病理診断を一括管理する「病理診断研究センター」の現状と展望についても言及した。

  2. 特別講演

    まず鍋島教授が「悪性胸膜中皮腫の診断における免疫染色とFISHの有用性」と題し特別講演を実施。悪性胸膜中皮腫とは、肺を包む膜(胸膜)を覆う中皮細胞に発生する悪性腫瘍で、発症にはアスベスト(石綿)が関与。胸膜生検のほか、80%以上が胸水で初発するため、胸水細胞診による早期診断が求められる。近年、中皮腫の遺伝子変異に基づく手法(免疫染色とFISH)による腫瘍性の認定が可能になった。そこで実際の症例や鑑別診断のための病理画像を提示し解説、さらに免疫染色を行う際に存在する落とし穴などにも触れ、「FISHの有用性と注意点を知り、適切な運用ができるようにしてください」と呼びかけた。

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    鍋島 一樹先生
    (福岡大学医学部病理学講座教授)

  3. 教育講演

    次に八尾徳洲会総合病院(大阪府)の中塚伸一・病理診断科部長が「免疫不全、免疫異常に関連したリンパ腫」をテーマに教育講演。がんの発生、発育、維持には宿主生体内の免疫環境が深くかかわっている。近年、免疫抑制剤、分子標的薬に関連したリンパ増殖性疾患が知られるようになり、臓器移植やAIDS(後天性免疫不全症候群)の少ない日本でも、悪性リンパ腫など免疫不全に関連した腫瘍に遭遇するようになった。免疫不全関連リンパ増殖性疾患はウイルスとの関連が特徴であり、また、薬剤の減量、中止による免疫不全状態の軽減により、腫瘍が退縮することもある。「一般的なリンパ腫でも、腫瘍微小環境での免疫抑制が腫瘍発生の機序に果たす役割は少なくないと考えられます。免疫不全関連リンパ増殖性疾患が、リンパ腫の発生機序を理解するうえで大きなヒントを与えてくれる可能性に期待したいと思います」とまとめた。

    中塚 伸一先生(八尾徳洲会総合病院病理診断科部長)

    中塚 伸一先生
    (八尾徳洲会総合病院病理診断科部長)

  4. シンポジウム

    続いて、「膵腫瘍の細胞診」をテーマにしたシンポジウムでは、樋口佳代子・沖縄協同病院病理診断科長が座長を務め、加藤拓・臨床検査技師、福岡病院の古川朋美・臨床検査技師、宇治徳洲会病院(京都府)の江口光徳・臨床検査技師がそれぞれ発表した。

    樋口 佳代子先生(沖縄協同病院病理診断科長)

    樋口 佳代子先生
    (沖縄協同病院病理診断科長)

  5. 一般演題

    2日目は一般演題がメイン。成田富里病院の臺勇一・病理診断科部長が「骨外性形質細胞腫が疑われた胃1型腫瘍の1剖検例」、加藤拓・臨床検査技師が「甲状腺穿刺吸引細胞にて副甲状腺腺腫と診断した1例」、千葉西総合病院の柳原希美・病理診断科医師が「関節リウマチによる大動脈閉鎖不全症の病理学的検討」、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)の小保方和彦・臨床検査技師が「当院での液状化検体細胞診ThinPrep5000機器導入による標準化への取り組み」、宇治病院の谷川美肖・臨床検査技師が「当院におけるEGRF遺伝子変異検査の現状~結果と分析のまとめ~」、八尾病院の室木魁人・臨床検査技師が「迅速診断テレパソロジー導入の実際」をテーマにそれぞれ発表した。
    最後に、出雲徳洲会病院(島根県)の丸山理留敬・病理診断科部長が「今年徳洲会グループに入職し、初めての学術集会でしたが、レベルの高さに驚きました。来年以降、より多い人数が集まり、さらに部会が発展していくことを願っています」と挨拶し、閉会した。

    丸山 理留敬先生(出雲徳洲会病院病理診断科部長)

    丸山 理留敬先生(出雲徳洲会病院病理診断科部長)