徳洲会病理部門 連携で診断強化 青笹・最高顧問が講演

徳洲会病理部門の青笹克之・最高顧問(大阪大学名誉教授)は5月度の徳洲会グループ医療経営戦略セミナーで、「徳洲会病理の現状 病理診断における保険医療機関間の病病連携と診療報酬改定」をテーマに講演した。徳洲会は病理部門が中心となり、病理専門医が不在の施設を拠点病院がサポートする病理診断の集約化に取り組み、がん医療の質の向上を図っている。

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「病理診断は、がん医療の出発点です」と青笹・最高顧問

診療報酬改定が追い風

青笹・最高顧問によると、病理専門医は全国に約2300人(2017年時点)しかおらず、常勤または非常勤の病理専門医が病理診断を行っている医療機関は全体の4割程度にとどまる。残りの6割の医療機関は、民間の検査会社に委託。具体的には生検、手術で採取した病理検体を検査会社に送り、同社が病理標本を作製、同社に勤務する病理専門医が病理報告書(判断書)を作成する。しかし、これは病理診断ではなく、あくまで報告書に過ぎない。

病理検査技師および病理専門医のいない施設にとって、病病連携に適したスキームは、病理検体を採取した病院が、病理専門医がいる病院に検体を送り、標本作成と病理診断をともに依頼するというもの。

しかし従来の診療報酬制度では、依頼側は検体ではなく標本を送付しなければ病理診断料を算定できず、経営的に不利な条件を強いられ、円滑な病病連携を推進するうえでネックとなっていた。

そこで青笹・最高顧問は検体でも算定できるよう、昨年、厚生労働省に提案。その結果、18年度の診療報酬改定で、検体でも依頼側が病理診断料を算定できるようになった。「これで、病病連携の円滑化が期待できますし、病病連携による病理診断は徳洲会以外にも波及していくでしょう」と見通す。

続いて、徳洲会の病理診断体制を紹介。現在、九州・沖縄病理診断研究センター、大阪病理診断研究センターが稼働。7月には東日本病理診断研究センターを立ち上げる予定だ。

たとえば九州・沖縄センターでは、鹿児島県と沖縄県にある病理専門医のいない徳洲会病院と、同センターを設置している福岡徳洲会病院が契約を結び、病理検体を同院に空輸し、同院で標本作成や病理専門医による病理診断を実施。「センター化のメリットは、精度管理の向上や、顔の見える病理専門医による診断、スケールメリットを生かした採用活動、学術面の協力体制などです」(青笹・最高顧問)。

一方、今後の課題として術中迅速診断や遠隔病理診断、剖検、CPC(臨床病理検討会)体制の確立を挙げた。最後に青笹・最高顧問は「病理センターをベースにした病病連携による病理診断の推進に協力をお願いします」と呼びかけた。