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徳洲会病理グループは5月28日から2日間、湘南藤沢徳洲会病院(神奈川県)で第3回学術集会を開催した。メインテーマは「精度管理」で、シンポジウムでは4人の演者を中心にいかにエラーを減らすか協議。また同日、同グループ総会も開催し、九州・沖縄病理診断研究センター(T―KOP)がいよいよ本格始動することなどを報告した。 

「活発に意見交換する慣習を身に付けて」と訴える青笹・最高顧問

「活発に意見交換する慣習を身に付けて」と訴える青笹・最高顧問

徳洲会病院の病理診断医と病理検査技師で構成する徳洲会病理グループは年1回、独自に学術集会を開催し、情報共有や知見の更新を図っている。今回は20病院から55人が参加、精度管理について考えるとともに、新しい診断分類の考え方や各院が経験した珍しい症例などを共有した。

シンポジウム「病理診断における精度管理」には、製鉄記念八幡病院検査部の金城満顧問を招聘(しょうへい)。金城顧問は尿路上皮腫瘍を引き合いに、標本の作製からレポートの提出まで病理診断の各工程での精度管理法を説明した。

診断前の注意点としては個人識別の徹底などを挙げ、QRコードなど用いた取り違え防止策を推奨。診断時にはピアレビュー(専門家による相互確認)が有効としつつも、「実際には1人病理医体制の病院が多く難しいのが現状です」と金城顧問。ただ、自身でのレビュー(見返し)でもエラーは減らせることから、その実施を求めた。

シンポジウムでは、さらに宇治徳洲会病院(京都府)の中村祥子・検査科副主任、札幌東徳洲会病院の青柳瑛子・臨床検査技師、八尾徳洲会総合病院(大阪府)の岩﨑由恵・検査室主任が自院システムを紹介、実践可能な精度管理法を協議した。

特別講演に登壇したのは埼玉医科大学総合医療センター病理部の田丸淳一教授。田丸教授は悪性リンパ腫について、分類法の変遷と今夏に改訂版が出版予定の新しい『WHO(世界保健機構)分類』に収載される見とおしの分類基準を紹介した。

20病院から病理医、臨床検査技師ら55人が参集

20病院から病理医、臨床検査技師ら55人が参集

リンパ腫は形態や分化段階ごとに、腫瘍を細分類するものだが、一方で若年性と加齢性で区別していたEBウイルス陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の陽性率は、年齢によって有意差がないことが判明し統一するなど、前回のWHO分類から8年を経て積み重ねたエビデンス(科学的根拠)をもとに、多くの変更点がある。田丸教授は各分類について、現段階で明らかとなっている発生機序や病理学的な検索法などを丁寧に解説した。

病理グループ総会では、青笹克之・徳洲会病理部門最高顧問が臨床検査技師の活躍に期待を寄せ「この学術集会で活発に意見交換する慣習を身に付けてください」と要望。続いてT―KOPの居石克夫センター長(福岡徳洲会病院病理診断センター長)が同センターをいよいよ本格始動することを伝え、その運営体制など改めて紹介した。

宇治病院の江口光徳・検査科技師長は、全国の徳洲会病院で実施した精度管理調査の結果を発表。評価が上がった施設は14施設にも上り、「標本製作の水準が上がってきています」と活動の成果に胸を張っていた。